2016年4月7日木曜日

IIT Hyderabad(インド工科大学ハイデラバード校)がインド国内で7位の工学系大学としてランキングされる

0. はじめに: IIT Hyderabadはそもそも何で、何が起きたか

インド工科大学(Indian Institute of Technology / IIT)は、インド国内では工学系最高峰の国立大学と位置づけられ、近年は、優秀な理工系人材を輩出する学術研究機関として世界的に注目を集めています。IITは、旧IIT(2001年までに既存校が改組されたものも含めて)が9校、新設IIT(2008年以降に改組・設立されたもの)が7校、新新設IIT(2015年以降に設立)が7校あります。IITいわゆる超難関大学で、全IITでの合計入学者数が1万人程度、近年は受験者数が200万人くらいということで、競争率も200倍程度と高いです。

IIT Hyderabadは新設IITの一つで、前身の大学を持たずに作られました。IIT Hyderabadは日本がODA「など」を通じて設立支援している大学です。2016年4月に、インド政府の人材開発省(Ministry of Human Resource Development / MHRD)から国内大学の分野別ランキングが発表され、IIT Hyderabad(インド工科大学ハイデラバード校)は工学系大学として7位にランキングされました。いくつか報道がされていて、ハイデラバード界隈では大騒ぎになっています。

[1] MHRDの国内ランキングWeb
[2] THE HINDU
[3] DECCAN Chronicle

1. 新設IITでトップ校という位置づけ

IIT Hyderabadは新設校の一つで、設立から7年が経っています。IIT Madrasをメンター校として運営が始まり、いわゆる独り立ちをして、仮説キャンパスから新キャンパスに移転し、学部・修士・博士の各課程で卒業生・修了生を出して成長してきました。IITは各校の独立性が高く、お互いをライバル関係に位置づけています。特に新設IITは設立時期が同じことからライバルで、常に比較されていました。その中で、ハイデラバード校が新設IITのなかで最上位にランキングされたことは、教員・学生・職員を勇気づけるものです。

2. 伝統校の一角に食い込む

旧IITはインド国内の工学系大学の最高峰として広く認知され、対抗心と伝統校に対しての尊敬の両方を持って、新IITで成長曲線を描きながら運営にあたります。新新設IITは、できて1年足らずなので、超大番狂わせとは行きませんでした。しかし、IIT Hyderabadは7校ある旧IITの一角に食い込み、7位にランキングされました。8位となった旧IITはGuwahati校(設立21年)です。ランキングに用いられた指標は、あくまで数ある指標のいくつかに過ぎず、その選択がHyderabad校に有利に働いたことは否めないと考えられますが、追いつけ追い越せの積極成長路線を突っ走ってきたIIT Hyderabadにとって、その努力の結果が数字として表れました。

3. 他のIITのベンチマークになり、短期的な恩恵を得る

良くも悪くも、数字やランキングとしてIIT Hyderabadの位置づけが明確になり、これから近い将来にかけて、新設IITや新新設IITがどう成長するかを評価する指標になるだろうと考えられます。これまで、IIT Hyderabadは新設IITのトップ校を自負して取り組んできましたが、政府からお墨付きを得たことで、その認知や地位が一時的に確立できたことになります。これによって、しばらくの間(特に将来の評価においてランクダウンするまで)、この恩恵を受けて入学生のJEEでのランキング(統一試験における受験生の順位・学生の品質の指標)が向上し、企業への採用活動でもその内容(採用に来る企業のランクや採用人数)に前向きな効果が出るかもしれません。

4. 日本とのつながり

IIT Hyderabadは、日本がODA「など」を通じて設立支援している大学です。それこそ、新キャンパスが何もない荒野だった時から、ずっと、です。キャンパスデザイン、建設、JST/JICA SATREPS事業(DISANET・2015年度6月にプロジェクト終了)、JICA 奨学金・学術・産学連携事業(FRIENDSHIP)など、いくつかのプログラムが実施されています。今回発表されたランキングには、これらのプログラムを通じた成果や、2国間のフォーマルな協力関係に頼らず、教員同士の信頼関係やビジネスの一環としての共同研究など、独自のモチベーションに基づいて得られた成果もカウントされています。発表された数字としては明確に区別はされていないものの、これまで培い、実践してきた日印連携は、全国ランキング7位という結果に大きく貢献しており、IIT Hyderabadの教員・学生・職員はその貢献を非常に重く見て、感謝しています。

5. おわりに: たかがランキング、されどランキング

指標はその時々で選択され、必ずしも大学のすべての実態を明らかにするものではないし、これで一喜一憂するわけではありませんが、IIT Hyderabadにとって非常に勇気づけられる途中経過になりました。目標が明確になったことはよいことですが、指標にならなかった項目を無視してよいわけでもなく、あくまで総合力としてどこまで向上し、自分たちの強みをより積極的に活かしていけるかというところで勝負をかけるのだと思います。ここに日本のプレゼンスが発揮されて、また、教育・研究開発・ビジネス・文化などあらゆる側面で日本の大学・企業とのつながりが深まっていくように、僕も教員の一人として貢献していければと思っています。いまだに「Visiting」ですが。(笑)